最近、胸焼けを主な症状とする逆流性食道炎が増加しています。

 

日本人の食生活が変化したことや、

 

ピロリ菌の感染率が減少したことなどが増加の原因と考えられています。

■主な症状について

 

 逆流性食道炎は、多くの場合、前胸部が焼け付くように痛む、いわゆる「胸焼け」として表現されます。甘いものや脂っこい食品で誘発されやすく、酸っぱいものが上がってきて気持ち悪い、のどがつまったような感じがする、などと表現されることもあります。

 

 

■逆流性食道炎の原因

 

 

 食べ物を消化するために分泌される胃酸が、食道に逆流することが直接の原因です。当然、胃酸の多い人がなりやすく、また胃の入り口の括約筋に緩みがあると逆流を起こしやすくなります。もともと緩みやすい体質の人がいるほか、高齢になると緩みがちになります。胃を圧迫するのも原因のひとつになります。肥満の中高年、腰の曲がった高齢者、妊婦は、逆流しやすい傾向にあります。また、ある種の降圧薬(血圧を下げる薬)には括約筋を緩める働きがあるので、その場合は主治医の先生との相談が必要になります。

■逆流性食道炎の診断

 

 症状を聞いて診断するのが基本ですが、内視鏡検査(胃カメラ)をおこなって、他の病気(食道がん、胃潰瘍など)ではないことを確認することは重要です。また、消化器疾患以外にも、心筋梗塞や狭心症、大動脈瘤といった循環器系の病気にも十分注意しなければなりません。食道内の酸性の強さを調べるためには、24時間のpH値測定検査をすることもあります。この検査では、正常な食道内のpH値が7程度であるのに対し、4未満を診断の目安とします。

 内視鏡で観察すると、食道下端に特徴的な傷が確認できることが多くあります。ただし、内視鏡で傷がない患者さんでも胃酸の逆流が症状の原因となることがあります。この疾患は、「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」として最近注目されつつあり、一般的に通常の逆流性食道炎より薬の効きが悪く、治療に難渋することもあります。

■逆流性食道炎の治療

 

 飲み薬による治療が中心となります。胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害剤と、H2ブロッカーを主に使用します。一般的な逆流性食道炎の場合は、数日の服用で九割方は症状が改善しますが、中止すると再発しやすいので、多くは長期の服用が必要になります。実例は極めて少ないのですが、胃酸を逆流させないように処置する手術もあります。

 

■日常生活での注意点

 

 油っこい食事、甘い食べ物は、胃酸の分泌を加速させるので避けるようにしましょう。胃を圧迫する原因になる食べ過ぎも禁物です。食後すぐに横になると逆流につながるため、食後三十分は寝ないようにします。また、下部食道括約部の弛緩を招く喫煙、アルコール類もできるだけ控えましょう。ベルトなどでおなかを締め付け過ぎるのもよくありません。ちなみに、最近の研究で日本人の場合、がんとの関連はほとんどないことが分かっており、過度の心配は不要です。また、胃・十二指腸潰瘍でピロリ菌の除菌治療をすると、1〜2割の割合で逆流性食道炎が発生しますが、多くは一過性かつ軽症で済むので、警戒し過ぎる必要はありません。

 

 

●協力/広島大学病院  消化器・代謝内科 伊藤公訓 診療准教授

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